美容室トップスタイリスト事件自由が丘にある美容室の副店長兼トップスタイリストの方が、美容室を経営する会社に対して未払い残業代を請求して訴訟を提起した事件です。2008年4月22日、東京地方裁判所は、副店長さんの請求する2年分の未払い残業代を全額認め、判決で278万円の残業代の支払いを会社に命じました。 裁判で主要な争点となったのは、①副店長さんが管理監督者に当たるか否かと、②時間外手当て不支給の合意の有無でした。 このうち、①の点について、裁判所は、副店長さんは、顧客(指名客や飛込みの客)へのサービス提供の内容や時間の決定について裁量があり、店長に次ぐ地位から店舗経営に関して中心的な役割を担っていたけれども、他方で、採用やスタイリスト昇格の権限がないなど人事・労務管理への関与は限定的で、役職手当も2万円と格別なものではなく、タイムカードによる出社時刻印や遅刻罰金制度などによる出退勤管理を受けていたことから、労務管理について経営者と一体的立場にあるといえないとして、管理監督者該当性を否定しました。 また、②の点については、会社側は、副店長を含むスタイリストには、基本給に加えて売上げに応じた歩合給を支払っており、このような賃金体系は美容師業界で一般的なもので、時間外手当を請求する場合と比べても美容師に不利益ではなく、副店長もこのような賃金体系を理解していたのだから時間外手当の不支給についての合意が成立していたと主張しました。しかし、裁判所は、基本給・歩合給の賃金体系が美容師業界で一般的であり、そのような賃金体系へ同意していても時間外手当の支払いを免れることはできず、仮に合意があっても労働基準法に反し無効であるとして、会社側の主張を認めませんでした。 なお、付加金については、美容師業界で一般的な基本給・歩合給の賃金体系が必要的・合理的な賃金算定方法であるとの認識のもと時間外手当を支払わなかったことは悪質であるとまではいえないとして、付加金は課しませんでした。
残業代請求が認められた事例 |